令和元年9月2日 大綱質疑
【令和元年9月2日 大綱質疑】
〇国民健康保険給付事務について
就職・転職等により既に堺市国民健康保険の資格を喪失し、他の健康保険(他自治体の国保等)に新たに加入しているにもかかわらず、堺市の国民健康保険証を提示して医療機関を受診した場合、堺市が負担した給付費の返還請求事務を行わなければなりません。かかる請求事務の中で、診療報酬明細書、いわゆるレセプトの返戻処理は行っていましたが、返戻処理ができない部分について、堺市が負担した給付費を被保険者へ直接返還請求する事務が行われていなかったことが判明しました。
調査の結果、直近2年間で毎年約1,800世帯前後、金額にして約4,800万円前後にのぼる返還請求手続の未処理が明らかとなり、以前より、このような事務が横行していた可能性があります。
しかしながら、かかる返還請求事務は一人の職員で対応しており、やらなければならないという認識はあったものの、物理的に処理が追い付かないという状況でした。また、この返還請求事務がシステム化されておらず、すべて手作業で行われていることも明らかとなりました。システム化されていない政令市は堺市を含めわずか6市のみで、他の14市はシステム化されていることから、今後、業務改善に向けて返還請求事務を行う職員の増員と早期のシステム化を提案しました。
〇堺市立総合医療センターの組織マネジメントについて
平成30年10月、堺市立総合医療センターで不適切な契約事務が行われていることが判明しました。
(事案の概要)
堺市立総合医療センターにおいて放射線機器の保守点検業務を導入するべく、事務局次長が放射線機器メーカーのA社と契約交渉を行っていました。当初、A社から堺市立総合医療センターへ提示された契約金額は約2億円でした。次長はA社との契約交渉と並行して医療センターの理事会へ契約手続の承認を得る決裁を求めました。この時、次長が理事会へ諮った承認申請額は1億円でした。1億円とした理由は、次長が自らの交渉で1億円まで値切れるだろうと考えたためでした。ところが、交渉の結果、約1億3,800万円までしか値下げできませんでした。そこで、不足する約3,800万円を、理事会承認の必要のない小口の契約金額に分割してA社へ残金約3,800万円を支払うこととしました。ところが、約2,600万円を支払ったところで、この手続きに疑問を抱いた職員が総務人事室へ相談し事案が判明したものです。
(発生後の対応)
平成31年3月、職員賞罰等審査会を立ち上げ事案を調査した結果、「不適切な事務処理を行ったこと、不必要な契約を締結し法人に不当な支払いをさせた」という点で、次長を降格処分、上司の局長も不適切契約を黙認したため降格処分となりました。
問題点①:契約のあり方
本契約は1億円を超える高額な契約であるにもかかわらず、堺市立総合医療センターは競争入札を行わず、A社と随意契約による手続きを進めました。また、契約書を取り交わす前にA社による保守業務が開始されるなど、不可解な契約の実態が明らかとなりました。
さらに不可解なことは、保守業務を請け負っていたA社から、残金の約1,200万円については債権放棄する旨の通知が来たそうです。
⇒堺市立総合医療センターにおける契約に際しては、すべて競争入札を導入すべきであり、契約事務の適切な履行を求めました。また、債権放棄をするということは、堺市立総合医療センターにとって真に必要な契約であったのか、すらも疑念を生じさせるものです。
問題点②:第三者委員会のあり方
平成31年3月に立ち上げた職員賞罰等審査会は、当初、内部人材のみで構成されておりました。これでは、第三者による公平・公正な視点での究明・対策を講じることはできません(後に、指摘を受けて外部の弁護士・会計士も加わりました)。また、調査の期限が決められておらず、委員会としての明確な目的も曖昧でした。
⇒第三者委員会の立ち上げにあたっては、第三者の公平・公正な視点が必要であることと、調査委員会としての明確な期限を区切った調査を遂行するよう求めました。
問題点③:処分のあり方
不適切な契約事務を行った次長は降格処分となりましたが、理事会承認された1億円を超える約3,800万円の支払いが法人としての損害だったのか、損害の場合、損害額はいくらか、といった事案の全容が判明していない段階で処分をしました。
⇒全容解明の上、対象者を処分すべきでした。既に、被処分者である次長は退職しており、これ以上の真相究明はできないのではないか、との懸念も指摘しました。
問題点④:組織マネジメントのあり方
平成30年10月に本事案が判明する以前に、次長が行おうとした小口契約での事務処理方法に疑問を抱いた職員が、次長へ事務処理の改善を進言しましたが、全く聞き入れられることはありませんでした。内部通報制度はありましたが、内部通報があると、理事長から事務局長へ情報が集約されることとなります。ところが、本事案のように事務局長も不正に関与している場合、内部通報制度を利用して組織の正常化を図ることは難しいものとなります。
また、堺市立総合医療センターには堺市からも職員が1名派遣され、経理責任者という立場で職務にあたっておりましたが、本市職員も本事案の不適切な事務処理を黙認していました。
⇒事務局とは独立した内部通報制度の構築を行うよう指摘しました。また、堺市の行政組織としてのノウハウを共有する取り組みの実施を求めました。
(提案)
堺市立総合医療センターへは、毎年20億円以上の税投入(運営費負担金)がなされており、医療センターとして不必要な契約は市民の損害と評価できる。今後は、市民が納得のいく説明責任を果たすべきであると指摘しました。
また、本事案は、人事の硬直化が招いた、特定の人間による直接・間接の影響力の行使が問題となったことから、人材の交流促進を踏まえ、副首都推進本部会議の場で府内の公立病院との一元化議論を行うべきであると提案しました。一元化を行うことで、職員の人材交流による組織の硬直化を防ぐこともできます。